猫を家族に迎えたら、食事やトイレ、寝床など、準備することがたくさんありますよね。
そんな中で、忘れずに考えておきたいのが動物病院での健康診断です。
「元気そうだけど、病院に連れて行った方がいい?」
「初めての健康診断では、何を調べるの?」
「検査にはどれくらいお金がかかる?」
初めて猫を迎える方にとっては、わからないことも多いと思います。
猫は体調の変化が外からわかりにくいことがあり、元気に見えても健康状態を確認しておくことには意味があります。
ただし、すべての猫に最初から多くの検査が必要というわけではありません。
この記事では、猫を迎えたあとの初診のタイミング、健康診断の主な検査項目、費用の考え方、年齢に応じた受診頻度を紹介します。
ワクチン接種やマイクロチップ、避妊・去勢についても、初診時に相談しておきたいポイントをまとめました。
猫を迎えたら、まず健康診断を受けよう
猫を迎えたら、できるだけ早い時期に動物病院で健康状態を確認してもらいましょう。
特に子猫や、これまでの健康状態がわからない猫では、早めの受診が役立ちます。
健康診断には、病気を見つけることだけでなく、その猫の普段の健康状態を知り、今後の健康管理の基準をつくるという意味もあります。
初めての健康診断はいつがいい?
元気で食欲もあり、特に気になる症状がなければ、迎えてから数日以内を目安に動物病院へ相談するとよいでしょう。
だし、迎えた当日に必ず受診しなければならないという意味ではありません。
譲渡元やペットショップなどで直前に健康診断を受けている場合は、記録を確認したうえで次の受診時期を決められることもあります。
一方、次のような様子が見られる場合は、予定していた健康診断を待たずに動物病院へ相談してください。
- 食欲がない、ほとんど食べない
- ぐったりしている
- 嘔吐や下痢を繰り返す
- 呼吸が苦しそう
- 目や鼻から分泌物が出ている
- 排尿しようとしているのに尿が出ない
特に呼吸の異常や排尿できない状態などは、緊急の対応が必要な場合があります。
元気そうな猫でも受診する意味はある?
あります。
猫は環境の変化に敏感で、体調が悪くても普段とあまり変わらない様子を見せることがあります。
また、口の中の状態や心臓の音、体重の変化などは、家庭だけでは確認しにくい部分です。
初診で体重や身体の状態を記録しておけば、今後の健康診断で変化を比較する際にも役立ちます。
初めて動物病院に行くときに準備したいもの
健康診断をスムーズに受けるために、事前に準備しておくとよいものがあります。
健康状態がわかる記録
譲渡元などから受け取った書類があれば、持参しましょう。
例えば、次のようなものです。
- ワクチン接種証明書
- これまでの診療記録や検査結果
- 駆虫薬の使用記録
- マイクロチップの登録情報
- 現在食べているフードの情報
- 気になる症状を記録したメモや動画
子猫の場合は、わかる範囲で生年月日や体重の記録も用意しておくと役立ちます。
安全に移動できるキャリーバッグ
猫を動物病院へ連れて行くときは、丈夫で扉を確実に閉められるキャリーバッグを使用しましょう。
抱っこしたまま移動すると、驚いた猫が逃げてしまう危険があります。
キャリーの中には、普段使っているタオルなどを入れると落ち着きやすい場合があります。
病院によっては便の持参を案内されることもあるため、予約時に確認しておきましょう。
猫の健康診断では何をする?主な6つの検査
健康診断では、一般身体検査を基本として、必要に応じて血液検査や尿検査などを組み合わせます。
主な検査は次の6種類です。
| 検査項目 | 主に確認すること |
|---|---|
| 一般身体検査 | 体重、体格、目、耳、口、皮膚、心臓や呼吸の状態など |
| 血液検査 | 貧血、炎症の手がかり、肝臓・腎臓の状態、血糖など |
| 尿検査 | 尿の濃さ、糖・たんぱく・血液の有無、結晶など |
| 便検査 | 寄生虫や便の異常など |
| X線検査 | 骨、胸部や腹部の臓器の形・大きさなど |
| 超音波検査 | 心臓や腹部臓器の内部構造など |
※この6項目を、すべての猫が毎回受ける必要はありません。年齢、症状、既往歴などに応じて獣医師が検査を提案します。
① 一般身体検査
一般身体検査は、獣医師が猫の体を観察したり、触れたり、聴診器を使ったりして健康状態を確認する検査です。
主に次のような項目を調べます。
- 体重や体格、筋肉の状態
- 目や耳、鼻の状態
- 歯や歯ぐきなど口の中
- 皮膚や被毛
- 心臓や肺の音
- お腹の状態
- 関節や体の動き
体重だけでなく、脂肪のつき方を評価するBCS(ボディコンディションスコア)などを用いて、体型を確認することもあります。
② 血液検査
血液検査は、採取した血液から体の状態を調べる検査です。
主に、血球計算(CBC)と血液生化学検査があります。
血球計算では赤血球、白血球、血小板などを調べ、貧血や炎症などを考える手がかりにします。
血液生化学検査では、腎臓や肝臓に関連する数値、血糖値などを確認します。
ただし、血液検査だけですべての病気がわかるわけではありません。
検査結果は、症状や身体検査、ほかの検査と組み合わせて判断します。
③ 尿検査
尿検査では、尿の濃さや成分、沈殿物などを調べます。
主な確認項目は、尿比重、尿たんぱく、糖、血液の有無、尿pH、結晶などです。
腎臓や尿路の状態を評価するうえで役立ちますが、尿検査だけで病気を確定できるとは限りません。
猫の年齢や状態によっては、血液検査とあわせて実施することがあります。
採尿方法については、動物病院の指示に従いましょう。
④ 便検査
便検査では、寄生虫の卵や原虫などがいないか、便の状態に異常がないかを確認します。
特に子猫や保護猫、屋外で暮らしていた猫では、寄生虫の確認が重要になることがあります。
ただし、1回の便検査で必ずすべての寄生虫が見つかるわけではありません。
必要に応じて再検査や駆虫を行う場合があります。
⑤ X線検査(レントゲン)
X線検査では、胸部や腹部、骨などの状態を画像で確認します。
心臓や肺の大きさ、臓器の位置、骨の異常などを調べる際に役立ちます。
ただし、健康な猫に毎回必要な検査ではありません。
身体検査で気になる所見がある場合や、年齢・既往歴などを踏まえて実施を検討します。
⑥ 超音波検査(エコー)
超音波検査では、超音波を使って体の内部を観察します。
腹部では腎臓、肝臓、膀胱など、心臓の検査では心臓の構造や動きを確認できます。
X線検査とは得られる情報が異なり、必要に応じて組み合わせることがあります。
多くの場合、全身麻酔を使わずに実施できますが、猫の状態や検査内容によっては保定などの工夫が必要です。
6つの検査は全部受けた方がいい?
初めての健康診断だからといって、6項目すべてを受ける必要があるとは限りません。
例えば、健康状態が安定している若い猫なら、まず一般身体検査を行い、必要に応じて追加検査を検討することがあります。
一方、シニア猫や持病がある猫では、血液検査や尿検査などを組み合わせた方がよい場合もあります。
検査には費用だけでなく、採血や移動、保定による負担が伴うこともあります。
検査をたくさん受けること自体が目的ではなく、その猫に必要な健康情報を得ることが大切です。
どの検査を受けるか迷ったら、獣医師に目的や必要性を確認しましょう。
猫の健康診断は何歳から、どのくらいの頻度で受ける?
健康診断の頻度は、猫の年齢や健康状態によって変わります。
一般的な目安として、次のように考えるとわかりやすいでしょう。
| ライフステージ | 健康診断の考え方 |
|---|---|
| 子猫(1歳未満) | ワクチンや成長確認などに合わせ、複数回の受診が必要になることがある |
| 若い成猫(1〜6歳ごろ) | 少なくとも年1回を目安に健康状態を確認 |
| 成熟期(7〜10歳ごろ) | 年1回以上を基本に、状態に応じて半年ごとの受診も検討 |
| シニア期(11歳以上) | 半年ごとの健康チェックを目安に、必要な検査を相談 |
※年齢区分はあくまで目安です。持病がある猫や治療中の猫では、より短い間隔で受診する場合があります。
子猫は成長や予防医療に合わせて受診
子猫の時期は、体重や体格が大きく変化します。
ワクチン接種、寄生虫対策、食事の相談などで動物病院へ行く機会も多くなります。
成長の様子を確認しながら、今後の健康管理について相談しましょう。
成猫は年1回を基本に
若く健康な成猫でも、定期的に体重や口の中、心臓の音などを確認することには意味があります。
前年の記録と比較することで、小さな変化に気づける場合があります。
ただし、年1回受診していれば、途中で体調が悪くなっても次の健康診断まで待ってよいという意味ではありません。
シニア猫は受診間隔や検査内容を見直そう
年齢を重ねると、腎臓病や甲状腺機能亢進症など、注意したい病気が増えてきます。
そのため、シニア期には半年ごとの健康チェックや、必要に応じた血液・尿検査などを相談するとよいでしょう。
また、7歳になったら必ずシニア用フードへ切り替えなければならないわけではありません。
体重、筋肉量、食欲、持病などを確認し、その猫に合った食事を獣医師と一緒に考えましょう。
猫の健康診断にかかる費用は?
健康診断の費用は、動物病院や検査内容によって異なります。
一般身体検査だけの場合と、血液・尿・画像検査まで含む場合では、金額に大きな差があります。
また、健康診断のセット料金を設けている病院もあります。
そのため、全国共通の費用を一つの金額で示すことは難しいのが実情です。
受診前に確認しておきたいこと
予約の際には、次の点を確認すると安心です。
- 初診料や再診料はいくらか
- 健康診断にはどの検査が含まれるか
- 追加検査が必要になった場合の費用
- 便や尿を持参する必要があるか
- 食事制限が必要か
- 結果の説明は当日か後日か
検査費用が気になる場合は、予算を伝えて優先順位を相談することもできます。
無理にすべての検査を受けるのではなく、必要性を確認しながら進めましょう。
初診で一緒に相談したい4つのこと

初めて動物病院へ行くときは、健康診断に加えて、今後の生活に関わることも相談しておくと安心です。
① ワクチン接種
猫のワクチンには、猫汎白血球減少症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症などを予防するための混合ワクチンがあります。
子猫では、母猫から受け継いだ抗体の影響などを考慮し、生後6〜8週ごろから複数回接種する方法が一般的です。
WSAVAの2024年ガイドラインでは、子猫の基本的なワクチンを生後6〜8週ごろから開始し、生後16週以降まで複数回接種することが推奨されています。その後の追加接種についても、ワクチンの種類や感染リスクなどに応じて獣医師と相談しましょう。
最終接種の時期やその後の追加接種については、接種歴や使用するワクチン、感染リスクに応じて判断します。
すべての猫が、すべてのワクチンを毎年接種する必要があるわけではありません。
完全室内飼育かどうか、多頭飼育かどうかなども伝え、獣医師と相談しましょう。
② 猫白血病ウイルス・猫免疫不全ウイルスの検査
新しく猫を迎えたときは、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)の検査について相談することがあります。
特に保護猫や、過去の生活環境がわからない猫、多頭飼育を予定している場合などでは、検査の必要性を確認しておくとよいでしょう。
ただし、検査の時期によっては感染を正しく判定できない場合があり、子猫では母猫由来の抗体が結果に影響することもあります。
必要に応じて再検査を行うことがあるため、結果の意味も獣医師に説明してもらいましょう。
③ マイクロチップの確認・登録
マイクロチップは、猫の個体識別に役立つ小さな電子標識です。
迷子や災害などで飼い主と離れてしまった際、登録情報から飼い主を確認できる可能性があります。
ただし、マイクロチップ自体にGPS機能はありません。
日本では、犬猫等販売業者が販売する犬猫へのマイクロチップ装着・登録が義務化されています。
すでに装着された猫を迎えた場合は、所有者情報の変更登録が必要です。
マイクロチップが入っているかどうかわからない場合は、動物病院で読み取りを相談できます。
④ 避妊・去勢手術
繁殖を予定していない場合は、避妊・去勢手術についても相談しておきましょう。
避妊手術は望まない妊娠を防ぐほか、子宮蓄膿症の予防や、実施時期によっては乳腺腫瘍のリスク低減につながります。
去勢手術は繁殖を防ぐほか、精巣の病気を防ぎ、尿スプレーなどの行動を軽減する場合があります。
ただし、手術をしてもすべての問題行動がなくなるわけではありません。
手術の時期は猫の体格や健康状態などによって判断されますが、一般的には生後5〜6か月ごろまでの実施を検討することが多いため、早めに獣医師へ相談しましょう。
手術後は必要なエネルギー量が変化し、太りやすくなる猫もいます。
体重や体型を確認しながら、食事量を調整することが大切です。
健康診断とあわせて、自宅でも猫の様子を観察しよう
健康診断は大切ですが、動物病院での検査だけで健康を管理できるわけではありません。
毎日の暮らしの中で、普段と違う様子がないか観察することも重要です。
例えば、次のような変化に目を向けてみましょう。
- 食欲や飲水量が変わっていないか
- 尿や便の回数、状態に変化がないか
- 体重が急に増減していないか
- 毛づやや毛づくろいの様子に変化がないか
- 遊び方や活動量が変わっていないか
- いつもと違う場所に隠れていないか
普段の様子を知っている飼い主さんだからこそ、気づける変化もあります。
気になる症状があるときは、健康診断の予定日まで待たずに動物病院へ相談してください。
よくある疑問
- 猫を迎えた当日に動物病院へ連れて行くべきですか?
-
元気で、譲渡元などから健康状態について十分な説明を受けている場合は、必ずしも当日である必要はありません。
ただし、体調が悪い場合や健康状態が不明な場合は、早めに相談しましょう。 - 完全室内飼いでも健康診断は必要ですか?
-
はい。
室内飼いでも、歯の病気、肥満、腎臓病など、注意したい健康上の問題があります。
外に出ないことだけで、すべての病気を防げるわけではありません。 - 健康診断では必ず血液検査を受けた方がいいですか?
-
年齢や健康状態によって異なります。
若く健康な猫では身体検査を中心にすることもありますが、シニア猫や持病がある猫では血液検査が役立つ場合があります。
必要性や費用を獣医師に相談しましょう。 - 猫が病院を怖がる場合はどうすればいいですか?
-
普段からキャリーバッグを部屋に置き、安心できる場所として慣れてもらう方法があります。
受診時のストレスが強い場合は、猫に配慮した診療を行う病院を探したり、予約時に対応方法を相談したりするのもよいでしょう。
自己判断で人間用の鎮静薬などを使わないでください。
まとめ|初めての健康診断は、これからの健康管理の第一歩
猫を迎えたら、できるだけ早い時期に動物病院で健康状態を確認してもらいましょう。
健康診断では、一般身体検査を基本に、年齢や体調に応じて血液検査や尿検査、画像検査などを組み合わせます。
大切なのは、たくさんの検査を受けることではなく、その猫に合った健康管理を続けていくことです。
初診では、ワクチン、寄生虫対策、マイクロチップ、避妊・去勢などについても相談できます。
そして、動物病院での定期的なチェックと同じくらい大切なのが、飼い主さんによる毎日の観察です。
健康なときの状態を知り、小さな変化に気づけるようにしておくことが、猫との暮らしを長く楽しむための助けになります。
参考資料・出典
- 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines
米国動物病院協会(AAHA)・米国猫獣医師協会(AAFP) - Diagnostic Testing for Each Life Stage
AAHA/AAFP・年齢別の推奨検査 - 2020 AAFP Feline Retrovirus Testing and Management Guidelines
AAFP・猫白血病ウイルス/猫免疫不全ウイルスの検査指針 - 2024 WSAVA Vaccination Guidelines
世界小動物獣医師会(WSAVA) - 犬と猫のマイクロチップ情報登録について
環境省 - AAFP Position Statement: Pediatric Sterilization in Cats
AAFP・猫の早期避妊去勢に関する見解





